領土問題で日中韓の間で連日ピリピリした緊張感が漂っています。
偶然の一致なのか日本では民主党代表選挙を前に、韓国では今年の12月に大統領選挙を前に控えている状況で、国内外で騒がしい日々です。
韓国行政のトップである大統領の任期は5年間となり5年ごとに全国選挙が行われます。
日本の衆議院解散のような制度は韓国にはありませんので、一度選ばれた大統領とその政党は5年間はかならず行政を担うことになるため、国の5年間を決める選挙といっても過言ではないでしょう。
今回の韓国大統領選挙は有力候補である朴槿恵、安哲秀、文在寅候補3人の競争が激しくなっています。
その選挙活動として今までのやり方以外に、特に新たな要素が加わりました。
ソーシャルメディアとインターネットの存在です。
選挙直前の3ヶ月でSNSを積極的に活用することでライバル候補者を逆転し大統領に主任したオバマ大統領の事例はみなさま聞いたことがあるかと思います。
2008年のアメリカ大統領選挙はSNSを初めて多くの人に政治の手段として認識させた事例なのではないでしょうか。
政治のソーシャルブームは韓国でも起きております。
韓国でもソーシャルメディアを活用して選挙活動をしたのは今回が初めてではありません。
去年ソウル市長の選挙においてもSNSは大きく活躍しました。
この選挙について、SNSが実際選挙結果に影響を与えたかどうかに関しては簡単にいえないが、政治に興味を持ってなかった人たち・おそらく選挙に参加しなかっただろう人たちにSNSを通じて興味を引き起こせたと評価されています。
具体的な成果は見えずらいとはいえ、選挙活動においてSNSは欠かせないツールになっているという印象をうけます。
今の韓国選挙において変わった点を2つ踏まえた上で本題に入ろうと思います。
1●SNS分析で有権者の声を拾う
Facebook/Twitter/韓国独自のSNSで大統領選挙候補者が言及された投稿の数やその内容を分析し、オンラインの世論と支持度がわかるようになりました。
▲2012大統領選挙候補SNS分析サービス(ワイズナット提供)
▲ツイッター検索エンジン「U Tweet」のリサーチサービス
▲ソーシャル検索サービス「Pulse K」(コナンテクノロジー提供)
候補ごとにFacebook、Twitter、カフェ、ブログなどで言及される回数を集計し、メディアに露出された回数も表示。
言及された内容でポジティブな内容とネガティブな内容を分けて支持度を表したりで、候補別にソーシャル上での影響力を比較できるツールが多数リリースされています。
これらの分析サービスを利用すれば、選挙の結果も予測できるのではという意見があります。
実際、去年のソウル市長選挙でとあるソーシャル分析サービスは分析結果から当選者を予測し見事に当てました。
2●PODCASTの利用
2011年韓国ではあることをきっかけで全国的にPodcastがブームになりました。
それまではiTunesはiPhone,iPod,iPadと動機してアプリをためておく場所、音楽をためておく場所としてしか認識されておらず、Podcastは全く活性化されていませんでした。
Potcastが注目を集めたのは2011年4月より始まった政治風刺コンテンツの「ナコムス」というチャンネルがきっかけでした。
「ナコムス」は去年8月、アメリカポットキャストで1位になり、2012年4月にもポットキャストオーディオ部門で世界1位になり、視聴者は1千万人以上と推定され、韓国全国でPodcastブームを引き起こしました。
去年のソウル市長選挙においてもPodcastは活発に利用され、候補者がもっと人間的な面を見せられる場、伝えたいことをマスメディアのフィルターを通さず伝えられる場などの役割を果たしました。
その流れは今回の大統領選挙にも影響を与え、今回の大統領選挙候補にもPodcastを運営する人が増えています。
▲Jaein Moon候補
▲Doogwan Kim候補
▲Segyoon Jung候補(音声のみで運営)
このようにSNS/インターネットが政治に活用されることが多くなっている中、先日韓国No1ポータルサイトであるNaverが批判をうけ記者会見を行うというハプニングがありました。
●韓国最大ポータルNaverにおける検索戦争
先月の21日、韓国内ポータルシェア1位のNaverのリアルタイム検索順位が修羅場になったのです。
日本ではNaverまとめ、LINEなどで有名なNaverですが、韓国ではシェア70%を誇るNo1ポータルサイトです。
それだけ一日多くの人が訪れるポータルサイトNaverのリアルタイム検索で一体何が起きたのでしょうか。
▲8月21日Naverリアルタイム検索順位表
1~3位、7位、10位と、Top10のうち半分が大統領選挙の最有力候補者2人の名前が入ったキーワードになっています。
しかも、単なる名前ではありません。
候補者の名前+キャバクラ、候補者の名前+コンドムといった刺激的なワードがランクインしていたのです。
一般的に韓国Naver検索でキャバクラ(正しくはルームサロン)を検索すると成人認証を求められます。
しかし、候補者の名前+キャバクラの場合は誰でも検索結果を見ることができました。
他のポータルの場合は複合キーワードであっても成人キーワードは検索順位から除外するのに対し、Naverは「知る権利の公正性」のため一定量以上検索数があれば成人キーワードであってもリアルタイム検索順位に表示させたためです。
「知る権利」はとても大事ですが、それが悪用された場合選挙に直接大きく影響する可能性は大いにあります。
Naverは韓国のポータルシェア70%と、最も影響力を持っているだけに、Naverの検索を意図的なネガティブキャンペーンに利用できることが証明された以上今後の選挙活動がどうなるかは容易に想像できるものでした。
根本的に問題があるのは、それをネガキャンに悪用しようとする人にあるとしても、そういう検索製作を導入しているNaverにも問題があるという批判が上がり、9月14日にNHNの金代表が記者会見を開くことになりました。
▲画像出所:ZDネットニュース
14日の記者会見で金代表は
Naverリアルタイム検索そのものをなくすつもりはない。韓国のほかのポータルでもリアルタイム検索は採用しているが、特にNaverの場合はネットユーザーが参加する文化遊び空間としての意味もあると信じているため、さまざまな議論はされているが維持する価値があると考えられる
と言及し、
ただ、今回のような名誉偽損ワードやリアルタイム検索結果操作の疑惑などについては外部からの検証を拡大することで検索の透明性を確保する
という方針を発表しました。
具体案として、
●リアルタイム検索の検索ロジック・運営原則・処理内容などのレポートを信頼できる外部機関に定期的に提出
●ある検索ワードがいつどのように登場したかを誰でも簡単に確認できるNaverトレンドサービス(仮)を開発中
という風に今後の改善策を発表しました。
選挙の影響で大手ポータルの運営方針が修正されることになるなんて、もはや選挙が政治の領域だけの問題ではなくなりましたね。
技術が日々発展し、人々のITリテラシーも日々高くなり至るところでITが活用されるようになってきました。
しかしSNSを活用した選挙活動など、まだ人類の経験が浅い部分に関してはまだまだ未成熟に見えます。
様々な問題を抱えながらも、SNSと政治の組み合わせは一般市民にとって政治に参加する入り口を増やしてくれるものなのではないかと思います。
これからのソーシャル政治のあり方を真剣に考えたいものですね。
参考記事(韓国語)
Betanewsの記事
Channel Aニュースの記事
Hankook日報の記事
ZDNetの記事